ネパール語でカビタ(Kabita)と呼ばれる詩は、語尾が韻をふんでいたり、語呂がよかったりして、耳障りのよい音の流れであるものも多い。
民謡やドホリ(Dohori)と呼ばれる男女の掛け合いの歌にも、この技法が用いられていることが多く、聞いていて楽しい。
連日続けられている抗議行動で群集が叫んでいるシュプレヒコール。抗議行動を間近で見てきた者によると、国王や皇太子に対する強烈なメッセージが叫ばれているとのこと。放送禁止用語連発であるため、ネパールのニュース番組では国営/民放あわせて、その部分だけ音を消す。
しかし、先日NHKで流れたニュースを見ていたら、ネパール人向けでないため問題ないからか、提供側が、この程度なら問題ないと判断したからか、国王批判のシュプレヒコールであるにもかかわらず、音声が消えることなく一部が流れていた。それは、こんな部分だった。
ギャネ チョール! デシュ チョール!
ギャネというのは言うまでもなく、ギャネンドラ現国王のこと(ギャネ呼ばわりされるなんて、少し国王が気の毒な気もする)。意訳すると、『ギャネは泥棒!国を乗っ取った泥棒!』という感じだろうか。
この程度の批判はかわいいもので、放送されていない部分では、相当すごいことを言っているとのこと。でもどれも聞いていると、語呂あわせよく、韻をふんで作ってあり、よくもまあ、うまいこと考えたなあ、と、不謹慎ながら笑ってしまう。
ネパールの祭のとき/トレッキングの最中に、ネパール人が自然に身を任せて楽しそうに歌って踊る姿を見かけたことがある人は多いと思う。この国の人たちは、小さいときから身近に歌と踊りがあって、体の中から生まれ出た感情を、こうやって体で表現することも多い。
今回、単なるシュプレヒコールを飛ばし行進するのではなく、即興で作った詩に抑揚をつけ歌にし、その歌にあわせて踊るという抗議行動が行われているシーンを、ニュースで流していた。国民の心の中から沸き起こったメッセージを、体で表現した、という感覚だろうか。円陣を組んで、歌い踊っている群衆の周りを、国軍兵や警官が警戒していたが、国軍兵や警官とは言えども、みんな歌や踊り好きな同じネパール国民であることには変わらない。きっと、心の中では彼らも苦笑していたことだろう。
レンガ投げ抗議よりも健全で、いかにもネパールらしいこの抗議行動に、不覚にも感動すら覚えてしまった。
Shanti lyauncha(un) janata ko boli le
Bichar marna sakdaina goli le
(意訳) 僕たち国民の声で平和を呼び戻すよ
銃弾で思想を撃ち殺すことはできないよ
Timro shasan 2(Dui) dinko bhaeni
Hamro shasan jiban bhari nai.
(意訳) 君(ギャネンドラ国王)の支配は2日だけのものであっても、
僕たち国民の支配は一生モノなのだ!
* 国王を『君』呼ばわりすることなど、通常はありえない。
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