TRCの関係で、ポーターのみ雇いたいというトレッカーが増えている。先日も、偶然事務所前を通りかかった日本人トレッカーがーポーターを探しにやってきた。
採用前に人柄チェックをしたいとのことで、各社まわって、ポーターの面接をして歩いているとのこと。私たちのポーターとも、いくつかの会話をしながら面接を始めた。
学校に一度も行ったことのない彼(ポーター)は、トレッキングをしながら覚えた英語を使って、もじもじしながら、ゲストの質問に答えている。名前は?とか、エベレスト街道には何回ぐらい行ったことがある?など、当たり障りのない質問に答えていたのだが、ふと一瞬、会話が止まってしまった。
横で見ていた私やスタッフが、ネパール語で助け舟を出す。
「自分の家族のこと話してみたら?独身なのか、妻子もちなのか、とか」
アイディアを得て、ポーターが英語で話し出す。
「ボクは24歳で、村には息子と、1人の妻がいます」
横で見ていた私たち、一同爆笑。ポーターはなぜ笑われているかいまいちわかっていない。すかさずスタッフが「Only one wife、ね。将来はわからないけど」とからかう。
そう、ここネパールでは、法律的には認められていないようだが、一夫多妻の習慣は、まだ残っている。浮気など絶対に許さない一般的な男女の価値観の持ち主から見れば、一夫多妻など理解できず、ドロドロの愛憎劇が繰り広げられそうなイメージかもしれないが、実際は、そんなことも無く、仲良く円満に過ごしている場合も多い。
スタッフがしつこく繰り返す。「彼には、1人の妻がいるだけだよ」。それを受けてポーターがもう一度繰り返す。「Yes, I have only one wife」。そして周りにまた笑われるのだが、彼はといえば、きょとんとしているだけだった。
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