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2006年11月12日日曜日

署名

銀行に用事があり行ってきた。

私の作業をしてもらっているカウンターの近くに、どう見ても銀行とは縁のなさそうな、乳飲み子を連れた女性が、慣れない様子で立っていた。たった今、村から着の身着のままで出てきたようないでたちの女性。ショールで背中に赤ん坊をくくりつけ、足元はぞうり。

見ていると、口座開設手続きをしているようだった。ネパールでは、銀行口座など持っていない国民のほうがおそらく圧倒的に多く、持っていたとしても、都市部に暮らす男性の所持率のほうが、多い。統計から確認したわけではないが、おそらくそうだといえる。

それが、いかにも村の女性といった風貌の女性が、男性の付き添いも無く、乳飲み子を連れて口座開設に来ているのは珍しい。自分の意思できたのだろうか。それとも、何か理由があって開設することになったのか。気になってちらちら目をやってしまった。

女性が、必要な書類いくつかに署名をする段階になった。担当の女性行員が、心配そうにこう聞いている。「あなた、サインはかけるわね?」

ネパールでは、読み書きができない人も多い。都市部で働く人たちとばかり接していると、統計的にこの国では文盲の人のほうが多いことなど、忘れてしまう。しかし、実際には、読み書きできる文字は自分の名前だけ、という人はけっこういる。

しかし、女性は、「もちろん」(サインできます)というようにうなずき、行員から渡されたペンを受け取った。そして、署名箇所を確かめ、署名を始めた。

行員に何度も「ここに書いたサインと同じものを、お金をおろすときに書かなくてはいけないのよ。少しでも違った文字を書いたら、お金はおろせないのよ」と教えられている。女性は、その注意を聞きながら、時間をかけて、ぎこちない手つきで一生懸命つづっていた。横から覗き込むと、それは、誰にでもまねできてしまいそうな、大きな字体だった。

家で何度も練習してきたのだろうか。確かめるように、一文字一文字一生懸命つづる女性。精一杯の、そんな署名だった。

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