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2013年11月5日火曜日

バイティカの想い

ティハール最終日、バイティカ。兄弟姉妹が集まり、姉妹から兄弟へティカをつける儀式を行う日。

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以前、一時期、ガイドたちがトレッキングに行く際、詳細な日記をつけてもらっていたことがあった。しかし、ガイド中に詳細な記録を残してもらうことも、それを邦訳してHPに掲載することも、どちらも面倒な作業で、すぐに途切れてしまったのだが。

今からちょうど10年前のことだ。

参考ページ:ガイドのトレッキング日誌

その中の一つに、毎年バイティカの日が近づくと必ず思い出す日記がある。

【2003年10月26日、ロブチェ(標高4930m)に到着したガイドの日記より】

12時半、ロブチェ着。トレッカーたちがたくさんいて、ロッジは満室。ドミトリー以外部屋はなく、ドミトリー泊。気温はどんどん低くなり、寒さが増す。

ラジオからは、デウシやバイリ(毎年10月頃ネパールで行われるティハールという祭りの際に、子供がご祝儀をもらいながら歌う歌)が聞こえてくる。そうだ、もうティハールが始まったんだ、と、思い出す。

家族が住む村や、実家、親兄弟のことを、思い出してしまう。でも、ロブチェのような山の中で一生を過ごすシェルパ達には、ティハールも、ダサイン(ヒンドゥ教最大の祭り)も、たいした重要性を持たない。僕にとっては、どちらも家族と過ごす、重要な祭りだけど。

普段は、1人や2人、知っているガイドやポーターがいるロブチェだが、今日に限って、知り合いは1人もいない。ラジオからは、次から次へと、デウシやバイリの歌を歌う、子供の声が聞こえてくる。ドミトリーの中にいても、鼻水が出てくるのも気がつかないほど、寒くてしょうがない。僕の目からは、思わず涙が出そうになる。

ロッジには電話があった。家族や友達に、電話をしようと思ったが、1分200ルピーということを知り、あきらめる。気を紛らわすために、雪の中を歩いてみる。雪のロブチェで、不覚にもホームシックを感じてしまった1日だった。(抜粋終わり)

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ティハールを祝わえない状況で聞くと孤独感と焦燥感が一層募る、バイリやデウシ。知り合いもいない場所で迎えるバイティカの日。

正月を1人、孤独に過ごす状況に、少し似ているかもしれない。

ところで、わずか10年前のことだが、当時はまだ庶民で携帯を持つ者は少なく、また、エベレスト街道でも携帯は通じていなかった。

今や誰もが最低一つは携帯を持ち、エベレスト街道でも、部分的に電波が届きにくいところを除き、カラパタール(標高5545m)でも通話可能な時代。高額な電話料を払って電話をかける必要があった10年前も、今は昔。


時代は変わったが、バイティカの日は兄弟姉妹と過ごしたいという想いは変わらない。

ダサインやティハール中にガイドを仕事に送り出したり、カトマンズのオフィスにスタッフを出勤させたりする際には、いつも、小さな罪悪感を感じてしまうのだが、それも今日で終わり。

明日からまた普通の日々に戻り、私の気も少し楽になる。

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