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2006年3月28日火曜日

儀式と酔っ払い

27日のつづき

儀式に参列し、食事が振舞われる前。

食事は、境内にある広いスペースで作られる。親族たちなどで炊き出しをする感じなのだが、段取りが悪いネパール人のこと。「まだ、食事の準備ができていないのよ。あと30分でできるから、もう少し待っていてね」といわれ続けてその後約2時間、待たされることになる。

この間、お寺の境内に座り、他の参列者とおしゃべりをしながら時間をつぶす私。

お寺には、貧しい子供たちや、酔っ払いなども集ったりする。この日も、モンゴロイド顔の酔っ払いが、1人クダをまいていた。

アーリア系の顔(というよりも、インド人顔)をしたバフン(ブラーマン)たちの中にいると、のっぺりとしたモンゴロイドの顔をした私は、いつも1人、かなり浮いてしまう。そんな中で、酔っ払いとは言えども、私と同じ系統の顔をしたモンゴロイド顔の存在には、けっこう親近感を感じてしまう。

でも、今私は、バフンの身内として儀式に呼ばれている身。酔っ払いは見るからにチベット系の民族。まだカーストの概念が残るネパールでは、明らかにバフンが下等と見る民族だ。しかも、バフンが宗教上、絶対に受け入れないお酒 (バフンでも人前でお酒を抵抗なく飲む人たちもいるが、彼らは、絶対に口にしないのだ) を飲んでいる酔っ払いには、いくら同じモンゴロイド系民族として親近感を感じても、私のほうから気軽に話しかけることははばかられる。

しかし。食事を待っている間に、酔っ払いのほうから私に近づいてきた。

ネパール語と、ネパール語ではない言葉(チベット系の言葉)をぶつぶつ言いながら、陽気に私に話しかけてくる。この酔っ払い、いつも、寺院にお参りに来る人たちに怒られているのだろうか、こんなセリフを繰り返している。

「何をしてもいいけどさ、怒るのはいけないよ、怒るのは。ねえ、そう思うだろう?*×△○◇・・・(ここの部分ネパール語ではない言葉で何かしゃべっている)」

明らかに私に話しかけているのだが、そうそう振り向けない。

「キミ、ニホンジンかと思ったけど、もしかして、、、タマン族かい?」

タマン族というのは、モンゴロイド系の民族。日本人に顔が似ているので、私もよくタマン族に間違えられることはあるが、この酔っ払いもそう思ったようだ。儀式に参列中の、周りにいるバフンたちには、この間違いはけっこうウケている。

「やっぱりキミはタマンなのか!妹よ!ワシもタマンだよ!!」

とこんな調子で、1人勝手に話を進めている酔っ払い。

以前、タマン族の村に10日間ほど滞在したことがある。だから、彼らの顔立ちや言葉、習慣には、なんとなく愛着を感じている。そういうこともあり、話し相手になってあげたいのはやまやまなのだが、今の立場上、気軽に相手にすることができないでいる私。

酔っ払いのほうも、私に親近感を感じているようで、話を止めようとしない。

「ゴハンはなかなかできないみたいだねえ。お腹すいたよねえ。果物食べるかい?」

そういったあと、ごそごそ何かを用意し始めた。いろいろな所から集めてきた(物乞いをして他人からもらった)果物が入った黒いビニール袋を、私の前に差し出してきたのだ。

「ほら、食べなよ。お腹すいているんだろ」

・・・。

「・・・今はいらないわ」

一言だけ答えて、あとは、どうすることもできずに、固まってしまう私・・・。

村では、バフンの台所には、不浄の概念から、タマン族は入ることはできない。カトマンズなどの街では、そういう概念も薄れてきているが、今日、儀式の真っ最中という状況では、私がタマンの酔っ払いが差し出した食べ物を、気軽に受け取ることはできない。

ありがとう。酔っ払いのおじさん。でも、ごめんね。今の私の状況では、気軽にもらうことは、できないの。

話し続ける酔っ払いを背に、裏切り者のように無視をするしかない私であった。

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