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2006年3月17日金曜日

バイクで運べなかったもの

こちらの人は、何でもバイクで運ぶ。

厳密に言うと、バイクに2人乗りして、後部座席に座っている人が、どんなものでも持って、運んでしまう。

たとえば、パソコン、テレビ、畳半畳ぐらいありそうなガラス、木材。

ダサイン(ヒンドゥ教最大の祭りで、ドゥルガ女神に生贄を捧げる習慣がある祭)前になると、ヤギや鶏なども、後部座席の人が抱えて運ぶ。

私も、引越しのとき、家具を抱えて運んだことがある。2人乗りではないが、郵便局に大きな荷物をとりに行くときは、スクーターの足元にダンボールを強引に置いて運んだりもする。

そんなに大きくないものなら、バイクで運べないものはない。そういう思い込みが、今日の事件(私にとっては大事件!)を引き起こした。

うちの飼い猫。ここ一週間ほど体調が悪く、口元と尻尾に大きな傷を負っていた。お腹はすいているようなのだが、口元の傷にしみるようで、水を飲むのがやっと、餌を食べることができない状態だった。

尻尾の傷はお尻付近にまで達し、歩くのもつらい様子。痔をわずらっているニンゲンのような格好で歩くのがかわいそうで、今日、病院に連れて行くことを決めた。

知人(ネパール人)が、飼い犬を時々連れて行くという動物病院を紹介してくれることになり、バイクの2人乗り(私が後部座席)で下見に行くことになったのだが、ついでだから、猫を抱えて連れて行ってしまおう、ということになる。

でも、猫は犬とは違うし、一度興奮状態になると爪は立てるし、すばしっこいので、タクシーで行く、と私が言っても、知人は、箱に入れていけば大丈夫、という。確かに、ヤギや鶏なんかも抱えて運ぶこの国の人たちだから、私になついている猫一匹ぐらい、大丈夫かな、と、私も運ぶ気になってしまう。

たまたま猫が入るぐらいの大きさのダンボールがあったので、それに無理やり押し込み、右脇に抱えてバイクの後ろに座る私。

エンジンがかかると、ただ事ではない状況を察してか、箱の中の猫が、本気で暴れ始めた。病気でぐったりしていた毎日がウソのような暴れぶりだ。

家から100mも行かないうちに、猫はダンボールのふたを押し開け、頭を外に出してしまった。そして、ふたを必死で押させる私の手を、思い切り爪で引っかき、バイクから飛び降り、逃げていってしまった。

あっという間の出来事だった。あたりまえのことだけど、すばしこい猫は、バイクでは運べなかった。

傷が悪化してきてからは、外出させていなかったのに、昼間逃げ出してから、夜になってもまだ帰ってこない。このまま野垂れ死にしたらどうしよう、と思うと、心配で何も手につかない。バイクで連れて行こうとしたことを、かなり後悔している。

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