2006年9月4日月曜日
トリスル(Trishul):三又鉾
トリスル(Trishul)というのは、ヒンドゥ教シバ神が持っている三又の槍。日本語では三又鉾と訳されることが多いようだ。日本の刺股(さすまた)は、長い柄の先端にU字型の金具がついている武器であるが、トリスルは、U字の真ん中にもう一本入っているような形となる。(写真のシバ神が左脇に挟んでいるのが、トリスル)
以前、ネパール中部にある古都タンセンに行ったとき、丘の上に建つ寺院を訪れたことがある。そこには、ネパール最大だったか、世界最大だったかのトリスルがまつられていた。
カトマンズ~ランタン・ヘランブー地方のトレッキングに行く際、トレッキング始発地点(ドゥンチェまたはシャブルベシ)までは、トリスリ(Trishuli)川と呼ばれる川に沿って進む。このトリスリという言葉は、シバ神が持つトリスルに由来しているそうだ。
この地方のトレッキングで有名な、ヒンドゥ教の聖地ゴサイクンダ(Gosaikund)という場所がある。ここには、シバ神にまつわる多くの話が残っていて、その中のひとつに、この場所でシバ神がトリスル(三又鉾)を使って地面を突き刺したところ、そこから水が溢れ出し川になった、それがトリスリ川という名前の由来だ、というものがあったと記憶している。
トリスルを使った話題を今日はひとつ。
先日、『山』という文字に似た模様がたくさん書いてあるデザインのラベルを、衣類の一部に縫い付ける作業をネパール人に頼まなくてはいけなくなったことがあった。
日本人同士であれば、模様を『山』という漢字にたとえ、向きが上下逆にならないように縫い付けて、という指示をすれば、すぐに理解してくれるところだ。
しかし、こちらの人には『山』の向きで、といっても通用しない。以前も同じ指示を出さなくてはいけないことがあったのだが、そのときは、ラベルを見せ「3つの先っぽを必ず上向きにするように」「Mの逆で、またはWの向きで」としつこいぐらいに注意を促した。
しかし、仕上がったものを見ると、半分ほどの向きが逆になってしまっていた。あれほどいくつも例を出して説明したのに、なぜに間違えたのか理解できないのだが、要するに、彼らにしてみれば、どちらを上向きにして縫い付けなくてはいけないか抽象的にしか理解していなくて、上下の向きなど意識していなかったということなのだろう。
今回は、以前の経験を生かし、ネパール人でも上下を間違えるはずのない具体的な指示の出し方を考えてみた。『山』の文字に似た模様を、絶対に上下逆にしないような、良い例。3つの先っぽが必ず上を向かなくてはいけない、と一発で印象付けるものは何か?
いろいろ考えていて、トリスルを思いついた。
シバ神が持つトリスルは先ほども書いたように三又となっている。シバ神はこのトリスルを、たいてい柄を下にして持つ。つまり、三又の突き刺す部分が上に来るから、『山』という文字に似ているデザインが持つイメージと共通する。
これなら、こちらの人の脳裏にもしっかり焼きついてくれるはずだ、そして、間違えようもなくなるはずだ、と思い、トリスリの例を出して説明したところ、効果てきめん、上下の向きを間違えなくなった、ということがある。
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