他人に何かをあげるとき、『受け取る側』が『ありがとう』というのは当たり前、と、私達は思っている。
しかし、世界には、『与える側』が『ありがとう』という国もあるそうだ。
『受け取ってくれてありがとう』という気持ちを込めて、『与える側』が『ありがとう』といいながら物を渡すのだ。このとき、『受け取る側』は、『ありがとう』とは言わない。
このような習慣を知らないと、『物を受け取ってありがとうの一言もないなんて、なんて失礼な!』と、誤解が生じる原因になりかねない。
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ネパールで『ありがとう』という意味の言葉は、都市部以外では日常的にはあまり使わない。一般的には、何かをもらった後は、首を揺らして感謝の意を表現する。『ありがとう』とは声に出して言わないから、首を揺らすしぐさが感謝の意を表していることを知らないと、満足してないのかな、と思ってしまう。
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ここ2ヶ月ほど、私は毎朝飲み水を用意し、オフィスに持っていっている。
水を引く機械が壊れてから、飲み水も準備できなくなってしまったので、ガイドたちのために家から持っていっているのだ。
毎晩、やかんで数回お湯を沸かし、冷めるまで待って、ペットボトルに移す作業を繰り返すのだが、1リットル入ペットボトルに5本~8本分の水を準備するので、なかなか面倒くさい。
『オフシーズンの今は、トレッキングの仕事もないので、ガイドたちもきっと懐が寂しい思いをしているはずだ。彼らの無駄な出費を少なくしてあげよう』と、ガイドたちのことを思い、毎晩、台所が蒸し暑くなるほどお湯を沸かし続け、5~8リットル分の水を配達してあげているのに、ガイドたちからは1度も『ありがとう』の言葉を聞いたことがない。
ときどき腹が立つが、これがネパールの習慣、感謝していないわけじゃないのだから、面と向かって『ありがとう』といってくれなくてもしょうがないか、と、自分に言い聞かせている。
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